1月の就任以来、トランプ大統領は「アメリカ第一主義(アメリカ・ファースト)」の通商政策のもと、国際協力や多国間貿易協定よりも米国内の産業、労働者、経済的利益を優先する経済・通商政策を強行に実施しています。大規模で広範な関税を発表する矢継ぎ早に発行される大統領令は、米国の貿易赤字を削減し、不公正な貿易慣行を変え、世界市場における米国企業の競争条件の平等化、国内製造業の振興、国家安全保障の強化を最大のプライオリティーとしていることが政策の背景です。
国内では、熱狂的な支持から熾烈な法廷闘争まで、さまざまな反応が見られ、主要貿易相手国との関係において緊張感を増している。ウォーレン・バフェット氏が、大統領の関税政策を「戦争行為(Act of war)」と表現したことも記憶に新しいです。ほとんどの国がトランプ大統領との交渉を慎重に進め、Win-Winの解決を目指していますが、最も高い関税を課された中国は、報復関税、経済支援措置、地政学的な再編、戦略的産業における技術的分離と自立に向けたイノベーション推進で対応しています。
関税の行方について不透明感が高まる中、さまざまな分野の企業経営者はあらゆるシナリオを検討し、次の一手を準備しています。関税の影響を懸念しつつも急激な生産拠点変更、それに伴う投資や米国での販売価格の引き上げをためらう企業がある一方で、深刻な影響を受け、事業計画の即時変更を余儀なくされている企業も少なくありません。
前回は、国家緊急事態とIEEPA関税について解説いたしました。今回は引き続き現在の関税措置の法的根拠、大統領の権限に対する法的な対抗措置を解説し、それらの変更や緩和措置等に関し、どのように最新の情報を確認し、どのような点について検討すべきかについて説明していきます。
国家安全保障と第232条関税
1962年貿易拡大法の第232条(以下、「第232条」という。)に基づき、トランプ大統領は、輸入品が米国の国家安全保障を脅かす場合、関税又は輸入割当を課すことができます。新たな関税措置を課すためには、商務省(DOC)による調査開始後270日以内に大統領に報告書を提出する必要があり、報告書の受領後、大統領は措置を講じることができます。また、大統領は既存の第232条関税を改正することもできます。
2025年3月12日、大統領令10895及び10896に基づき、トランプ大統領は既存の鉄鋼及びアルミニウムに関する第232条関税を改正し、すべての原産国に対して、鉄鋼、アルミニウム及び派生製品に25%の関税を課しました(既存の国別免除又は割当合意は終了する)。2025年3月26日、大統領令10908に基づき、トランプ大統領は、特定の乗用車及び小型トラック並びに自動車部品のすべての輸入品に追加関税を課しました。
トランプ大統領は、商務省に対し、米国の防衛能力、インフラ開発、技術革新を脅かす可能性があると考える品目につき国家安全保障上のリスクを評価するよう指示した。調査の対象は、銅及びその派生製品、木材、木材製品、半導体及び半導体製造装置並びにその派生製品、医薬及び医薬品原料、中型トラック、大型トラック、中型及び大型トラックの部品並びにその派生製品、加工重要鉱物及びその派生製品、民間航空機及びジェットエンジン並びにその部品等多岐にわたります。大統領は、この報告を受けた後に関税を課すことができますが、大統領は関税の割合は25%以上となると表明しています。
既存の関税の変更や新たな関税につながる調査に加え、トランプ大統領は鉄鋼及びアルミニウムに関する第232条に関する大統領令にて、米国税関・国境警備局(CBP)に対し、対象輸入品の分類の見直しを優先的に行うよう指示しています。また、CBPが第232条の鉄鋼又はアルミニウム関税の未納を招く誤分類を発見した場合、CBPは法律で許される「最大」額の金銭的罰金を課し、「その決定において軽減要因の証拠を考慮しない」よう厳格に指示しています。これは関税措置における新たな動きであり、CBPの執行強化につながる可能性が高いです。
その他の関税措置
その他の関税措置には、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ(BRICS諸国)が米ドルから離脱した場合に課す100%の関税が含まれます。また、大統領は中国に対する永久的通常貿易関係(PNTR)の撤廃を議会に求めることも検討していると表明しており、これにより中国に対する通常関税が一部製品で最大100%まで引き上げられる可能性があります。
ビジネスの現場でどう対応するか?
こうした目まぐるしい変更に対応することは、経験豊富な専門家でさえ容易ではなく、ワシントンのホワイトハウスや議会に張り付くとうい従来の方法では困難です。ビジネスの現場でも担当者が変更にリアルタイムで対処するには次のウェブサイトを確認することができます。
(1)トランプ大統領のTruth Socialのアカウント https://truthsocial.com/@realDonaldTrump)、(2)ホワイトハウス公式サイト(https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/)、(3)連邦官報公式サイト(https://www.federalregister.gov/)、(4)米国税関国境保護局(CBP)ウェブサイト(https://www.cbp.gov/trade/automated/cargo-systems-messaging-service)、(5)CBP貿易救済措置ウ
ェブサイト(https://www.cbp.gov/trade/programs-administration/trade-remedies)。これらのウェブ
サイトで、新たな関税、変更、免除、関税の積み増し、還付機会などが確認できます。それに加え上述の通り、裁判所の判決や上訴手続きが速度を増し進んでおり、裁判所の判断も検討する必要があります。
サプライチェーンの反応
このような新たな関税に対応するためには以下のような対策が考えられます。
- 供給契約:契約を定期的に見直し、サプライチェーンのパートナーと協力して、明確で
十分な柔軟性を確保する条項を交渉する。 - 関税分類:正しい関税分類を申告する。輸入業者は、米国関税率表(HTS)コードを選
択できない(例:最も低い関税率のHTSコードを選択する)。輸入品が誤ったHTSコー
ド(より高い関税率)で分類されていると考える場合、輸入業者は将来の輸入に関する
拘束力のある事前判断を当局に対して請求するか、過去の輸入に関する異議申し立てを
提出できる。 - 通関評価:課されるべき関税をCBPが査定するために、適切な価値を評価し申告する
。CBPが推奨する評価方法は「取引価格」となる。これは、米国へ輸出するために販売
された貨物に対して、実際に支払われた又は支払われるべき価格を指す。 - 原産地計画:関税の対象となる材料が、第三国での生産によって、名称、特性、用途な
どが異なる新しい物品へと「実質的な変化」を遂げたかどうかを検討し、製品にとって
有利な原産地を確立する。より有利な原産地とは、当該物品が貿易救済措置やその他の
追加的な特別関税の対象とならない国や、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでおり、
関税の減免又は免税措置が提供される国が含まれる。 - 免除措置:利用可能な免除措置があるかを確認しそれを正確に適用する。
- 自由貿易ゾーン(FTZ):CBPの入港地内又はその近傍に位置する保税地域内でありなが
ら、関税法及びCBPの輸入手続きの目的上は税関領域外と法的に見なされる区域。関税
措置においては、FTZは関税支払いの猶予を可能にするが、貨物が商業流通に入った場
合、FTZは関税や新規関税を排除するものではない。 - ロビー活動:米国議会及び行政機関に対するロビー活動は、関税措置に関して様々な種
類の潜在的な解決策を提供し得る。
以上紹介したさまざまな手法を参考にしてください。
本記事は、特定の事実や状況に関する法的アドバイス又は法的見解として解釈されるものでは
ありません。内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的質問については、
必ず弁護士にご相談ください。
