オリンピック開催中の東京では、8月22日まで緊急事態宣言が発令されている。具体的に言うと、酒類などを提供する飲食店に休業要請、上記以外の飲食店や大型店舗は夜8時までの営業要請、イベント開催は上限5000人、かつ収容率50%以下で開催要請、不要不急の外出自粛、帰省や旅行を控える、といったものだ。

そんな中、大場陽子さんという岩手大学の准教授で宮城県大崎市在住の音楽家の活動が話題になっている。大場さんは、新型コロナウイルス禍をテーマに男声合唱曲「ハルモニア ~ウイルスとヒトと宇宙のために~」を制作、27日に同県多賀城市文化センターである合唱団パリンカ(仙台市)の創団30周年記念演奏会で初演された。

密を避けるため、合唱団員は指揮者を中心に2メートル間隔で放射状に外向きに立ち、指揮の様子は手鏡で確認する。距離があることでお互いの声に耳を澄ますことになる。聴くものも歌うものも「聴く」「伝える」ということを真に考える作品だ。

「一人一人は違う方向を向いていてそれぞれに歌っているけれど一つの世界として調和してる作品。そんな作品を作りたいと思い、作曲した」という。1人のバリトンで始まり、2人目、3人目が順番に受け継ぐ。テノール、バスも加わり、調和した声が響く。歌詞はなく、飛沫が出にくいとされるボカリーズ(母音唱法)が採用されている。

大場さんは、「ウィルスも含めた地球上に棲むものたちが、ちょうどよい距離感を保ち、調和した世界を維持することが大切」と説明する。さらに、「地球上に住むものたちも互いの『ソーシャル・ディスタンス』をしっかりと考える時期に来ているのではないか」「急速に生活領域を広げてきた人類が自然界を脅かした結果、いまの非常事態を生み出してるのかもしない」と問い掛ける。

手鏡を持ち、「ハルモニア」の練習をするパリンカの団員ら

大場さんは、自然界から発想を得た作品制作にも取り組んでいる。まわりにある自然界に目を向け耳をすまし、音楽という形でそれを表現する大場さん。実に興味深い。


大場陽子さん

東京藝術大学大学院修士課程修了。

第67回日本音楽コンクール(管弦楽曲)第1位、併せて安田賞、第3回JFC作曲コンクール(室内オーケストラ)佳作など受賞。

第22回および第26回芥川作曲賞において、オーケストラ作品『誕生』『ミツバチの棲む森』がそれぞれノミネート。

異種楽器混在への興味から、「酔々快響(タブラ、マリンバ、タイゴング)」(2004)、「あやなり(ヴァイオリン、フルート、25絃箏、ガムラン楽器)」(2005) などのコンサートをプロデュース。また、美術家、ピアニストと共に、インスタレーション「音と色彩のシンクロ」を行う(2006)。

2004年より「音楽のある空間づくり」をテーマに様々なスタイルの公演を行い、音風景を設置する活動を展開(GOTEN GOTEN アート湯治祭、第8回長崎おぢか国際音楽祭/旧野首天主堂建立100周年記念事業、第4回越後妻有アートトリエンナーレ etc.)。

2009 年より「生活に寄り添う発酵音楽プロジェクト」を始動。CD『お酒の子守唄(1.発酵、2.しぼり、3.熟成)』とその音楽で音響熟成させた純米吟醸音楽酒「天音」が発売中。

2013年には「大地が生み出す産物をテーマにした音楽」を収録したCD『お豆の物語&ゆきむすび』をリリース。

作曲家グループ「クロノイ・ プロトイ」メンバーとしても活動し、サントリー芸術財団より「第9回佐治敬三賞」を受賞。

映画・舞台音楽、オーケストラアレンジなども手がけている。

現在、岩手大学准教授。http://univdb.iwate-u.ac.jp/html/904_ja.html

By Sazan

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