トランプ政権は4年間にわたり400以上もの新しい移民法規定や方針を発表しました。バイデン大統領は政権発足後、トランプ政権が施行した数々の措置を徐々に撤回し始めています。そこで、最近の移民法の変更点について説明します。
【BAHA】2021年1月25日に、バイデン大統領は大統領令により、トランプ政権によって発表されたBuy American Hire American(通称BAHA)を撤廃すると発表しました。BAHA推進のため、トランプ政権はアメリカ人の雇用や賃金を改善するために各政府機関に外国人の移民申請基準を厳しくするように指示を出していました。その結果、オバマ政権が推進した同じビザ種類での延長申請の簡素化方針が撤回され、H1Bビザ申請に関しては、顧客先での勤務体系に対する審査基準が厳しくなり、さらにH1BやLビザ雇用主の監査が強化されました。そのため、各種就労ビザ申請に対し追加証拠の要請が発行される確率が非常に高くなり、却下率もかなり上昇しました。今回の大統領令により、各種ビザの申請基準はオバマ政権時代の基準まで徐々に戻るのではないかと思われます。
【公的扶助ルール】2021年3月9日にバイデン政権は、トランプ政権によって2020年2月24日から適用され始めた公的扶助ルールを取り下げました。この法律はビザを申請する外国人が将来アメリカ政府から公的扶助対象、つまり金銭的な援助を受ける可能性があるかを調べるものです。公的扶助ルールは主に永住権申請者に適用され、申請者は個人の資産や負債などについて詳細な情報の開示と証拠書類の提出を求められました。また各種就労ビザや家族の延長申請にも公的扶助受給の有無に関する質問が追加されました。今回の措置により、各種申請フォームから公的扶助の質問は削除され、今後は公的扶助ルールに関する証拠書類を提出する必要はなくなりました。また、現在申請中の人も、公的扶助ルールに関して審査はされません。
【トランプ大統領令】
- 永住権申請。2021年2月24日にバイデン政権は、トランプ大統領令10014を中断すると発表しました。大統領令10014は 新型コロナにより打撃を受けたアメリカ経済の回復に向け、アメリカ人の雇用促進に弊害をもたらす外国人の入国を制限する目的で作られたもので、2020年4月22日に始まり、2021年3月末まで延長されていました。この大統領令により、米国市民の近親者以外の国外からの永住権申請が一時的に中断していました。バイデンの措置により、各国米国大使館や米国領事館では、地元の新型コロナの蔓延状況をみながら、永住権申請審査を徐々に再開していますが、昨年からの申請禁止措置のため現時点では面接待ちの申請者のバックログが大変大きく、面接にたどり着くまでまだ数か月はかかる見込みです。
- 短期就労・交換ビザ申請。2021年4月1日にバイデン政権は、トランプ大統領令10052を延長しないと発表しました。大統領令10052は2020年6月22日に始まり、2021年3月31日まで延長されていました。この大統領令は、新型コロナによるアメリカ国内の失業率を改善すべく、H1B専門職ビザ, H2B季節労働者ビザ, 特定のJ-1研修・短期就労ビザ, L-1関連会社間転勤ビザなど、国外での新規申請やアメリカへの入国を制限したものです。
今後もアメリカ市民やその家族の申請、さらに緊急面接が優先されますが、各国の米国大使館や米国領事館では、地元の新型コロナの蔓延状況を考慮し、面接の安全確保を確認できたら、徐々に各種ビザ申請の審査枠を広げていくことになります。ただ、昨年からの特定ビザの新規申請禁止と各種ビザ面接のキャンセルが続いたことから、現時点では面接予約が大変込みあっているので、予約は早めに入れる必要があります。郵送申請の選択肢がある人は郵送申請を選んだ方が無難です。面接予約が取れない場合は、緊急面接のリクエストを出してみたらよいでしょう。
【ビザ面接免除の範囲拡大】
2021年3月11日には、各国の米国大使館や米国領事館でのビザ延長申請の面接免除の対象範囲を広げると発表されました。前回の申請内容に変更がない場合、今まではビザスタンプ失効から12ヵ月以内であれば、面接に代わり郵送による延長申請を選択することができました。しかしながら、昨年からの渡航制限のために自国に戻れない人が相次ぎ、ビザスタンプ失効後12ヵ月以上が経過している申請者が増えたために、トランプ政権は面接免除の対象をビザスタンプ失効後24ヵ月以内に変更しました。今回バイデン政権はその免除対象期間をさらに延ばしました。これにより、2021年12月31日までは、ビザスタンプ失効後から48ヵ月以内であれば、郵送によるビザ延長申請ができるようになりました。ただし、LブランケットによるLビザの延長申請者は依然として面接が必要となります。
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