アメリカの上院では、トランプ前大統領への2度目の弾劾裁判が行なわれた。多くの予想通り、前大統領の煽動が議会乱入につながったとするこの弾劾裁判では、2月13日に57対43で「無罪」となった。民主党の上院議員50人全員と共和党の上院議員7人が「有罪」に投票したが、必要な3分の2には10票足りなかった。
しかし、前大統領が今後、刑事責任を問われる可能性もある。上院共和党のトップのミッチ・マコネル氏も、弾劾裁判では「無罪」に投票したが、「この国には刑事司法があり、民事訴訟もある。そして、前大統領はどちらからも免責されるものではない」と語っている。
ワシントンD.C.の議会乱入について、連邦検察のマイケル・シャーウィン検事正代行は「我々は全ての関係者を調べており、何らかの役割を果たし、それに犯罪の要素があるとの証拠がある者は訴追される」と語り、トランプ前大統領が含まれる可能性も否定しなかった。
また、トランプ前大統領は他の事件の捜査対象にもなっている。ジョージア州のフルトン郡地検は、トランプ氏の選挙結果を覆そうとする取り組みに関する刑事捜査を開始した。トランプ氏は少なくとも3つの州法に違反した可能性があると指摘している。選挙詐欺をするよう犯罪を教唆した罪と共謀罪、さらに他人の選挙義務の履行に「意図的な干渉」を禁じる法に違反した可能性があるという。
ニューヨーク州の司法当局もトランプ前大統領や前大統領が所有する企業を捜査していて、その範囲を拡大させているという。
ソブリン市民運動
それにもかかわらず、以前解説したQアノンの最も熱烈な支持者らは、今でも諦めていない。2020年の大統領選挙で敗北したトランプ元大統領が、2021年3月4日にワシントンD.C.でアメリカ大統領に就任し、政権に復帰するとしている。
Qアノンの支持者らが3月4日をこれほど重視するのは、「ソブリン市民運動(sovereign citizen movement)」というとんでもない考えから来ている。それは、1871年に制定されたある法律が密かにアメリカを国家ではなく企業に変え、それ以来アメリカ政府は非合法であり、アメリカ国民は一連の連邦法の支配下にはないとする考えだ。
その結果、彼らはそれ以降に就任した大統領は全員、正統な大統領とは認めず、ユリシーズ・グラント第18代大統領が最後の正統なアメリカ大統領だと信じている。そして、グラント元大統領が19世紀の他の大統領と同じく3月4日に就任したことから、ソブリン市民運動支持者たちはは2021年3月4日に共和制が復活し、トランプ元大統領がアメリカ第19代大統領になると信じている。
なぜ、このようなConspiracy Theory(陰謀論)が蔓延し、それを信じる人がこれほど多いのか。それについてはエモリー大学の研究者らは興味深い論文を発表している。その論文に関するビジネスインサイダーの記事はこちら:https://www.businessinsider.jp/post-221607