アメリカの首都ワシントンDCで1月6日に起こった、バイデン次期大統の就任確定に抗議するトランプ大統領の支持者らの連邦議会議事堂乱入事件で、侵入者の中で一際目を引いたのが、バッファローのようなツノ付き毛皮帽をかぶり、顔を赤と白と青にペイントした上半身裸の人物だ。

この人物はアリゾナ州出身のジェイクアンジェリJake Angeli)ことジェイコブ・アンソニー・チャンズリー(Jacob Anthony Chansley)。熱心なトランプ大統領支持者でQアノン信者として知られる。少なくとも2019年からトランプ氏支持集会などでQアノンの陰謀説を叫んできた人だ。

現在彼は逮捕され、起訴されている。アリゾナ州の司法省の検察官によるメモには「国会議事堂の暴徒の意図が議員たちを捕らえて暗殺することであったこと」「チャンズリーは、彼が宇宙人であり、より高い存在であると話したこと」などが書かれている。

そのチャンズリーが信奉するQアノンとは、「Q」と名乗る人物が2017年にインターネット掲示板4chanに書き込んだ投稿がきっかけとなって生まれた、陰謀論を信じるいわゆるカルト集団だ。

Qアノンの核をなす主張:「トランプ大統領は単なるアメリカの大統領ではなく、小児性愛者のリベラルエリートたちと闘い、世界を救うヒーローだ」

信者たちは「アメリカは、児童売春組織を運営する民主党議員やハリウッドや財政界の大物らが運営する『闇の政府』に支配されており、トランプ大統領はその闇の政府と秘密裏に戦っている」と信じている。その一人はDC暴動時にインタビューで「立法も司法も自分たちの味方につかない。もう自分たちでやるしかない」とトランプ氏の勝利を信じて止まないのだ。

大統領選挙の前、トランプ大統領はQアノン信者について「彼らは国を愛していると聞いている」「彼らが私のことを好きでいてくれることに感謝する」と、陰謀論を支持するような発言をしていた。そんなトランプ大統領はQアノン支持者にとってヒーローであり、トランプ大統領の支持者の約半数がQアノンを信じているという調査結果もある。そのためそのトランプ氏が大統領選挙で破れることになった場合、Qアノン信者たちによる、暴力行為が起きることは以前から予想されていた。

1月20日の政権交代まで2週間弱となったが、アメリカでは今後のトランプ支持者やQアノン信者たちの動きに予断を許さない状況になっている。

Qアノンの主張は、全く根拠のないものだが、信者は世界中に広がっている。

日本でも、トランプ氏が批判するメディアや中国政府に不信感を抱く支持者が、東京でも大統領選で不正が行われたと主張するデモを開催。エリート層が築いた秩序を壊す『救世主』としてトランプ氏を支持する「Qアノン」も8都県でグループを作った。世界70カ国超にメンバーがいるとされ、エリート層らで形成する「ディープステート(闇の政府)」が印象操作を進め世界を牛耳っていると信じている。

名古屋市でも7日、米大統領選での不正を訴えるデモもが行われた。「闇の組織が本当は勝ったトランプ氏を退場させようとしている」「世界支配をたくらむ勢力がコロナ騒動をつくった」「トランプ大統領、諦めないで」「アメリカで起きていることは、外国勢力による国家乗っ取りだ」と、プラカードには書かれていた。先月二十七日には、三百人超の人々が名古屋・栄を約一時間かけて歩き、トランプ氏を応援した。家族連れもいた。

これとは別に「新型コロナウイルスは恐れる必要なし。マスクはしないで」と名古屋の街頭で訴え続ける人々もいる。両グループはいずれも「陰謀論」を唱える。これらの集団が「Qアノン」信者かどうかは不明だが、日本でも似た動きが広がっていることは確かだ。

主催団体の石田昭会長(78)は「トランプ氏敗北と報じられた米大統領選には不正があり、各国政府やマスコミに影響を及ぼす組織ディープステートが関与した」と唱える。「ディープステートとつながる中国共産党がコロナウイルスを作り、サイバー攻撃を仕掛けて米国を乗っ取ろうとしている」と言う。

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