一時の大騒ぎは鎮まってきたかに見えるが、なおみファンとしては書いておきたい。そう、あの全仏オープンで選手の義務である記者会見拒否を宣言し、罰金を課された件だ。大坂は、そのことに対するまわりの反応の大きさゆえに、大会の棄権を決めた。そして、しばらくは休業の可能性もある。

子供の時からトーナメントに出場する大坂を見守ってきたサザンであるが、その頃からシャイで表彰式でもあまり笑顔を見たことが無い。世界のトップに出てからも、コートでプレーする姿とTVのインタビューでの姿には大きな差がある。子供の頃からのシャイな姿はそのままだが、やはりZジェネレーション。Twitter等に見せる自撮りの写真は明るく、そこにはコートでの姿との良い意味でのギャップ、『力強さ』vs『華やかさ』というのがある。

さて、選手たちに参加義務がある記者会見は、本当に必要なのだろうか? 錦織圭やナダルは、大坂選手に理解を示しながらも、ニュースを発信してくれる人がいるからプロスポーツは成り立つのであるし、賞金をもらっていること、大会がいろいろな人によってつくられていることを考えると、記者会見はしなくてはいけないと語っている。一方、「私も何度もメディアに苦しめられた」と大坂選手を支持する声も出ている。特にプロテニスのトーナメントでは、早期敗退したスター選手も会見に呼ばれ、敗因について根堀り葉堀り聞かれるといった独特な慣習があり、選手たちのストレスの原因になっていることは確かであろう。

出る杭は打たれる

大坂は若くしてトップに立ち、BLM運動のオピニオンリーダーとしても注目された。多額の賞金を稼ぎ、さらに何倍ものスポンサーからの収入があり、豪邸に住み、さまざまなビジネスにも関わる。今回の大坂の記者会見拒否をワガママとか生意気と見る人もいる。特にメディアの世界で、何十年もこのやり方でやってきたベテランの記者たちが怒るのも仕方がないのかもしれない。

大坂は「怒りの原因は理解の欠如、人は変化を嫌がるもの」「(記者会見のルールは)かなり時代遅れな部分がある」と指摘した。従来の体制を批判した大坂のこの言葉がどう受け止められるのか、これをきっかけに変化への議論が行われるのかどうかは疑問だ。

メンタルヘルス

人はそれぞれだ。どんなに1つのことに秀でてる人でも、全てのことが優秀にまたは普通にできるとは限らない。「プロなんだからそれぐらいちゃんとやらないと」と、言われても苦手なことは苦手であり、それを強いられるとストレスになる。ストレスが続くとうつ症状が出る場合もある。エリートアスリートたちは、試合の場で高度の集中力が必要とされ、大きなストレスをすでに抱えている。

大坂は今回の件で、「(優勝した2018年の全米オープン以降)長い間、うつの症状に悩まされ」「人前で話すのが得意ではなく、世界のメディアに向かって話す前には不安の波に襲われる。本当に緊張するし、会見に出ていって、自分にできる限りの答えを出そうとすることは、いつも大きなストレスになっている」と明かした。さらに「アスリートの心の健康状態が無視されていると、記者会見を見たり、参加したりするたびに感じていた。幾度も同じ質問をされたり、私たちが疑念を抱く質問を受けたりする」と、Twitter等に載せている。

うつ状態に陥る経験は、多かれ少なかれ誰でもが経験したことがあるのではないだろうか。特に、容赦を知らないソーシャルメディアによる批判やバッシングに、傷つき、うつ状態に陥る若者は多い。大坂も取材拒否がここまで批判の対象になるとは想像していなかったであろう。飄々としているようで実は繊細で感情のアップダウンがある彼女のメンタルサポートに、家族や関係者は気を配ってくれるはずであり、彼女には今一番必要としていることだろう。

東京オリンピックには出場してくれることを期待したいが、できなくても理解はできる。暖かく見守りたい。

By Sazan

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